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農場HACCP認証とはどんな制度?メリット・デメリットやポイントを解説

近年、食に対する安全性を求める消費者が増えたことから、「HACCP」に注目が集まっています。

この記事では、畜産業にも影響する農場HACCP認証制度について、メリット・デメリット、制度のポイントを解説します。

この記事の監修者


農場HACCP認証とは

農場HACCP認証とは、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Points:危害分析重要管理点)の手法を適用して、農場の食品安全を確保することを目的とした認証制度です。

さらに嚙み砕くと、HACCPとは「Hazard(危害要因)、Analysis(分析)、Critical(重要・必須)、Control Point(管理点)」となります。

農場がHACCPを導入し、その認証を取得することで、生産した農産物の安全性と品質を向上させ、顧客満足度を高めることができる制度と言えるでしょう。

なお、農林水産省では、HACCPを次のように定めています。

HACCPとは、原材料の受入れから最終製品までの工程ごとに、微生物による汚染、金属の混入などの危害要因分析(HA : Hazard Analysis)をした上で、危害の防止につながる特に重要な工程(CCP : Critical Control Point)を継続的に監視・記録する工程管理システムです。

食品企業の安全・信頼対策、標準化|農林水産省

ちなみに「HACCP」に決まった読み方はありませんが、一般的には「ハサップ」と呼ばれることが多いです。カウタロー編集部所属のHACCP指導員でもある獣医師も「ハサップ」としています。

そもそもHACCP(ハサップ)とは

さて、そもそもHACCPとは何なのでしょうか。

HACCPは、食品に潜む危害要因を分析し、その危害要因を低減させたり取り除いたりする過程を記録管理する手法です。

宇宙開発が活発だった1960年代のアメリカで、宇宙食をはじめとする各種食品の安全性確保の手法として誕生しました。

この時の安全確保手法は、現在では多くの食品生産過程に応用されています。

農場HACCP認証の重要性

つづいて、農場HACCP認証の重要性について説明します。ポイントは次の3点です。

  • 食品安全の確保
  • 農産物の品質向上
  • 輸出競争力の向上

食品安全の確保

農場HACCP認証は、食品安全の確保を目的とした制度です。農場がHACCPの手法を導入し、食品安全の確保に取り組むことで、生産物に含まれる微生物、異物、残留農薬、残留獣薬等の危害物質を把握し、そのリスクを最小限に抑えることができます。

農産物の品質向上

農場HACCP認証は、農産物の品質向上にもつながります。HACCPの手法によって、生産プロセスの中で品質が低下する要因を洗い出し、改善することができます。品質が向上することで、消費者からの評価も高まります。

輸出競争力の向上

農場HACCP認証を取得することで、輸出市場に参入することができます。海外では、食品安全や品質に対する要求が高く、農場HACCP認証を取得している農場が優先的に取引される傾向にあります。また、海外においては、農場HACCP認証を取得している農場から輸入された農産物に対する信頼度が高くなります。

農場HACCP認証の取得手順

農場HACCP認証を取得するためには、以下の手順が必要です。

  • HACCPマニュアルの作成
  • HACCPチームの結成
  • フローチャートの作成
  • 危害分析の実施
  • CCPの設定
  • CCPの監視と記録
  • HACCPの検証と見直し

HACCPマニュアルの作成

HACCPマニュアルを作成します。HACCPマニュアルには、生産プロセスにおいて危害物質が混入するリスクがある場所(Critical Control Point:CCP)を特定し、そのCCPにおけるリスクを管理するための手順を記載します。

CCPの設定

HACCPマニュアルに基づいて、CCPを設定します。CCPは、食品安全に影響を与える可能性があるポイントであり、そのポイントでの危害物質の混入リスクを管理する必要があります。

監視計画の作成

CCPでのリスクを管理するために、監視計画を作成します。監視計画には、CCPで行うべき検査・検査方法、測定値の基準、監視の頻度、監視結果の記録方法などが含まれます。

対応手順の作成

CCPで問題が発生した場合に、対応するための手順を作成します。対応手順には、問題が発生した場合の対応策、その策を実施する責任者、実施時期などが含まれます。

HACCP認証の取得

HACCPマニュアル、CCP、監視計画、対応手順などを作成し、認証機関に提出します。認証機関は、農場のHACCP導入状況を調査し、適合性を判断して認証を行います。

農場HACCP認証のメリット

農場HACCP認証を取得することで、以下のようなメリットがあります。

  • 農場のレベルアップにつながる
  • 安心安全な食肉を提供できる
  • 農場のブランディングにもなる

農場のレベルアップ

HACCPの導入は、農場の生産プロセスにおいて、危害物質の混入リスクを管理するために作業工程をすべてを記録します。

すなわち、誰が、なにをすると、どうなるのか(結果が悪かったとすれば、どうすればよかったのか)

畜産業においては、なぜこの家畜は病気になってしまったのか。なぜ、死んでしまったのか。(どうすればよかったのか)

このようなPDCAサイクルを農場全体に回すことによって、農場のレベルアップにつながります。

このPDCAによるレベルアップが、農場HACCP最大の目的です。

また、作業工程を記録することには、新人に対する教育プランを作りやすくなる効果もあります。そのため、新人に対する教育のレベルも上がります、農場のレベルアップにつながります。

安心安全な食肉を提供

農場がHACCPを導入し、危害物質の混入リスクを管理することは、消費者に安心安全な食肉を提供することにつながります。

農場のブランディング

農場HACCP認証を取得することは、農場のブランディングにもつながります。

消費者は安心安全な食品を求める傾向があり、農場HACCP認証を取得している農場からの購入を優先する消費者は今後ますます増えていくでしょう。

農場HACCP認証のデメリット

一方で、農場HACCP認証を取得することによるデメリットとして、以下のような点が挙げられます。

  • 「農場HACCP認証農場」という肩書きが目的化すること
  • 導入コストの増加
  • 導入に伴う手間や時間の増加

「農場HACCP認証農場」という肩書きが目的化すること

農場がHACCP認証を取得することは、消費者からの信頼を得ることができることから、多くの農家が目指す目標の一つとなっています。

しかし、その過程で、「農場HACCP認証農場」という肩書きが目的化してしまい、本来の目的である安心安全な食肉を提供することが、二の次になってしまうことがあります。

導入コストの増加

HACCPの導入には、専門知識や技術を持つ人材の雇用、検査機器の導入、検査費用など、多くのコストがかかります。これにより、農場の運営コストが増加する可能性があります。

導入に伴う手間や時間の増加

HACCPの導入には、多くの手続きや作業が必要となります。これにより、農場の経営者や従業員の手間や時間が増加することがあります。

農場HACCPは認証後の適切な運用が重要

HACCPは、食品安全管理のための国際的な基準であり、農場においても導入されることが求められています。

農場HACCP認証を取得することにより、消費者に安心安全な食肉を提供することができ、農場のレベルアップやブランディングにつながることメリットです。

ただし、導入に伴うコストや手間、肩書き目的化などのデメリットもあるため、農場の実情に合わせた判断が必要となります。

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