畜産飼料の炭水化物として「NDF」と「NFC」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
この記事では、NDF(中性デタージェント繊維)とNFC(非繊維性炭水化物)、それからVFA(揮発性脂肪酸)の関係について紹介します。
ルーメン微生物が利用できる炭水化物は「NDF」と「NFC」
ルーメンの中には大量の微生物が住んでいます。そして、このルーメン微生物の餌(エネルギー源)になるのが炭水化物の「NDF」と「NFC」です。
NDFとは発酵消化に時間がかかる炭水化物
NDF(Neutral Detergent Fiber|中性デタージェント繊維)は、発酵消化に時間がかかる炭水化物です。
稲わらや乾草など、いわゆる粗飼料にたくさん含まれている「繊維」が、NDFです。
NFCとは発酵消化が早い炭水化物
NFC(Non Fiber Carbohydrate|非繊維性炭水化物)は、その名の通り「繊維ではない」炭水化物です。繊維ではないため、発光消化はNDFよりも早いと言われています。
麦やとうもろこしなどに含まれている「デンプン」や「糖」は、NFCに分類されます。
ルーメン微生物が炭水化物を利用した残り物がVFA(揮発性脂肪酸)
「NDF」と「NFC」をルーメン微生物が利用した残り物が、VFA(揮発性脂肪酸)です。VFAは酢酸、酪酸、プロピオン酸が代表例として挙げられます。
VFAはルーメン内で生成され、そのままルーメンから吸収されます。この吸収されたVFAは、牛のエネルギー源となりますから非常に重要です。
なお、このVFAがルーメンからうまく吸収されず、ルーメン内に「VFA」や「VFAの作りかけ(乳酸など)」が増えすぎると、ルーメン内は酸性に傾きます。(いわゆるルーメンアシドーシスになってしまう原因の1つです)
NDFとNFCは両方VFAになる
NDFとNFCは両方VFAになります。
VFAは牛のエネルギーになりますから重要な物質です。
しかし、ルーメン内に蓄積するとルーメンアシドーシスの原因になってしまいますから、ルーメンがVFAを吸収する速度に合わせたバランスが重要ということになります。
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NFCはルーメン微生物のエネルギーとしても重要
NFCはVFAとなって牛のエネルギー源になるだけではなく、ルーメン微生物のエネルギーにもなります。
ルーメン微生物はNFCをエネルギー源とし、ルーメン内の発酵によってアンモニアに分解されるDIP(分解性タンパク質)を、菌体タンパク質に変えてくれます。
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ルーメン内(牛の体内)にアンモニアが増えれば、肝臓に負担をかけたり、肉色を悪化させたりする原因になりますから、NFCとDIPのバランスをみて給与することが重要です。
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