揮発性脂肪酸(VFA)の一種であるプロピオン酸。今回は、そのプロピオン酸と牛の関係について紹介します。
プロピオン酸とは
プロピオン酸とは、科学的には刺激臭を有する石油類の一種です。
一方、牛にとっては、プロピオン酸はエネルギー源になります。
プロピオン酸は揮発性脂肪酸(VFA)の一種
プロピオン酸は、牛のルーメン内での発酵によって、生成される揮発性脂肪酸(VFA)の1つです。
VFAは酢酸、酪酸、プロピオン酸が代表例として挙げられます。
VFAはルーメン内で生成され、そのままルーメンから吸収されます。また、プロピオン酸は肝臓で利用され、肝臓において糖新生の主要な材料となることもポイントです。
ルーメン微生物が飼料を発酵分解してプロピオン酸ができる
糖類やでんぷんなどの炭水化物(NFC)は、微生物による発酵過程で、その排泄物としてプロピオン酸、酪酸となります。
さらに詳しくいうと、NFCの中でもデンプンがプロピオン酸に、糖はプロピオン酸と酪酸になります。
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プロピオン酸は、肝臓でブドウ糖に合成されます。
低級脂肪酸のうちでもプロピオン酸のエネルギー転換効率は高い
プロピオン酸は、他のVFAと比較してエネルギー転換効率が高い特徴を持ちます。そして、肝臓でプロピオン酸は、酢酸や酪酸と同様に利用され、エネルギーを産生します。
また、プロピオン酸はブドウ糖の前駆体としても機能し、血糖値の調節に寄与します。このため、プロピオン酸は牛のエネルギー供給や代謝調節において重要な役割を果たす成分とされています。
低級脂肪酸の中でプロピオン酸の高いエネルギー転換効率は、牛の健康維持や成長、生産性向上に寄与します。適切なバランスの飼料とプロピオン酸の生成は、牛の栄養摂取とエネルギー効率を最大化する重要な要素です。
ルーメン細菌叢のバランスを保つことが重要
プロピオン酸と牛の関係において、特に重要なのはルーメン細菌叢のバランスです。ルーメン内の微生物は、様々な飼料成分を分解する役割を果たしています。
しかし、微生物の種類や数のバランスが崩れると、プロピオン酸を含むVFAの前段階にあたる乳酸が増えすぎて、ルーメン内が酸性に傾く危険性が高いです。
このように、ルーメン細菌叢のバランスが崩れ、VFAの生成・吸収がうまくいかないと、ルーメンアシドーシスなどの健康問題が引き起こされる可能性があります。
ルーメン細菌叢のバランスを保つことは、牛の健康と生産性を最適化するためにも重要であり、飼料の選定や管理の側面で考慮されるべき要因です。