牛飼いの方は、敷料になにを使っているでしょうか。もし、合板敷料を使っている方がいれば、注意しなければなりません。
私は獣医師として、日々畜産に携わる中で、さまざまな事例に遭遇しますが、最近の一件は特に重要なものでしたので、情報を共有したいと思います。
牛たちの健康と安全に深刻な影響を及ぼす可能性がある、合板敷料による健康被害の問題が発生しました。以下、実際の事例を通じて詳しく説明します。
この記事の監修者
合板製作工場から供給された敷料は牛にとって要注意
ある日、私は子牛の肺炎治療のために哺乳、育成舎に入った際、牛たちの異変に気づきました。
さらに、私自身も目の痛み、頭痛、吐き気、胸の痛みを感じました。この状況から、アンモニアガスの発生を疑い、牧場主にお願いして床の敷料を交換してもらいました。
しかし、翌日には新しい木屑が敷かれましたが、前日よりも強烈な症状に見舞われました。
この木屑の出所を調べると、他県の合板製作工場から供給されたものだとわかりました。
この問題について公害研究所に問い合わせたところ、木屑に、合板の整形・切断時に発生するものが混入している可能性が高いという回答を得ました。
具体的には、合板の接着剤成分であるホルムアルデヒドやフェノール類などが含まれている可能性があり、有毒であることがわかりました。
本来であれば、このような木屑は産業廃棄物として適切に処理されるべきものです。牛の敷料に使ってはなりません。
敷料が原因で子牛が発育不良になることもある
合板の接着剤成分が子牛に与える深刻な影響についても触れておきます。この時の子牛たちは、個体差はありましたが、肺にかなりのダメージを受け、発育不良を引き起こしました。(子牛の肺には気を遣わなければならないことは、牛飼いの皆さんはご存知かと思います。)
さらに子牛の発育不良に留まらず、当年・一年後・二年後には廃用や死亡という悲しい結果に至るケースもあり、その結果、数百万円の損失が生じたと考えられます。
この事例から明らかなように、敷料の選択は牛たちの健康に深く関わっています。牧場主の皆様には、敷料の品質と安全性に対する高い意識を持っていただきたいと強く呼びかけます。
牛用の敷料を調達する時に注意するべきポイント
牛用の敷料を調達する時には、次の2つがポイントです。
- 異物・有害物質混入の防止策について確認
- 敷料取引先とのコミュニケーション
異物・有害物質混入の防止策について確認
敷料の供給業者に対して、品質管理や異物・有害物質混入の防止策について確認を行うことは必須でしょう。合板製作工場からの供給である場合は、合板の接着剤成分であるホルムアルデヒドやフェノール類などが含まれていないか、特に注意が必要です。
敷料取引先とのコミュニケーション
牛用の敷料を調達する時には、敷料取引先とのコミュニケーションが非常に重要です。
最後に、もしかすると敷料への有害な木屑の混入が、意図的に行われている可能性も考慮すべきです。敷料調達先が経費削減を目的とした不正な行為が存在する可能性もありますので、疑わしい事例がある場合は関係当局に報告することも検討してください。
(経験上、県行政は、無自覚、無関心、無気力ですので、独自で取引先と交渉した方がいい場面もあります。)